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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

と、顎をすくう。

蘭丸は立って、

「しばし、お待ちを」

と、一礼して、小走りに出て行った。

午となり、午過ぎとなった。

蘭丸は、容易に帰って来ない。かかるうちにも、伊丹方面や高槻城あたりから、物見の報告は頻々とはいってくる。

そのうちでも、もっとも彼の胆を寒うさせた一報は、

「――今暁、毛利の水軍が、兵庫の海辺へ夥しく寄って、荒木村重の属城、花隈城のうちへ兵を入れた」

と、いう新しい事実であった。

花隈城の下、西ノ宮から兵庫の海道辺は、京都大坂から播州へ通う唯一の交通路である。

「筑前も、はや、そこは通れまい――」

と、知ると同時に信長は、派遣軍と安土との聯絡が遮断される危機にあることを察して、自身の喉首へ敵手が懸って来たような焦りを覚えた。

「蘭丸は、まだか?」

「まだ、戻りませぬ……」

信長はまた沈思する。

――中国の毛利と、大坂の石山本願寺、こう二大敵国を繞って、それに連鎖する山陰の波多野一族や、播磨の別所や、伊丹の荒木村重などの群れが、兀然と、いまはその敵性と一環の聯絡とを、明らかに誇示して来たなと――身の緊まる思いがするのであった。

しかも、東方を顧みると。