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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
「起きておるか」
「いえ、この両三日はまた」
「臥せったままか」
「はい」
「どこじゃ、病間は」
「彼方の離室が、静かでもあり、お好みのようなので」
「では、あちらへ参ろう。穿物はないか」
秀吉が庭へ下りかけた時、半兵衛に附きそっている小侍の一名が駈けて来て、
「ただ今、衣服をあらためて、主人がお目通りにうかがいますゆえ、しばらく、客院で御休息のほどを」
と、いうと、秀吉は、ばかなといわぬばかりに、
「起してはいかん。起してはいかん」
独り叱りながら、園内の一庵へ、大股に歩いて行った。
秀吉が来たと聞くと、半兵衛はすぐ病床をたたませていた。
召使に室の清掃を命じ、自分はその間に衣服を着かえた。そして木履を穿いて降り立つと、籬の菊の根を縫って来る小流に身を屈めて、口を漱ぎ手を浄めなどしていた。
「なぜ、そんな軽はずみをする。病人のくせに」
後ろへ来て、軽く肩を打った人を振向いて、
「おう、いつの間に」
と、半兵衛は、地へひざまずかぬばかりに、身を低め、
「まず……まず……あれへ」
と、清掃されている室内へ、主君秀吉を迎え上げた。
粗朴な壁に、禅家の墨蹟が懸っているほか、何もない床をうしろに、秀吉は、至極気楽にあぐらを組んだ。