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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

そして、信長の本塁は天野山におかれた。こう壮観な布陣を展開しながら、彼はなお、衂らずして叛軍を降すことに、一縷の望みをつないでいた。

その望みは、播磨へ帰った秀吉のうえにつながっている。秀吉から陣中へ、

(なお、一策あり)

と、いって来ているのである。そのことばの裏には、秀吉が、村重の武勇を惜しんで、また日頃の友情からも、

(なおしばしお待ちあるように)

と、信長へ懇願している気持も充分つつまれていた。

彼が片腕とたのむ帷幕の人、黒田官兵衛孝高が秀吉の旨をうけて、一夜平井山の陣地から忽然とどこかへ去ったのは、実にこういう機運の切迫している時だったのである。

官兵衛孝高は、あの次の日、父宗円の主筋にあたる御著の城主小寺政職のところへ急ぎ、やがて政職に目通りしていた。

「摂津の荒木どのと組して、当城もまた織田家にそむき、毛利方へ随身せりとの噂が立っておりまする。右は、事実でしょうか、単なる虚伝にございましょうか」

と、官兵衛は単刀直入にいって、まずその人の腹蔵をたたいてみた。うす笑いを浮べながら政職は聞いていた。年から見れば自分の息子のような官兵衛だし、身分からいっても家老のせがれに過ぎないので、それに答えてやる彼の言葉も極めて横柄でまた露骨だった。