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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
大炊介がそこへ入って、幾刻ともたたないうちに、表の政務所のほうでは、にわかに繁忙なうごきが現われていた。
軍触れが発しられたのである。夜になると、その混雑はなお増していた。
夜どおし、人影がうごき、城門の出入りはやまなかった。
夜が白みかけると、城外の馬揃いの広場には、すでに、約一万四、五千の兵馬と旌旗が、朝霧の底に、粛として濡れていた。
まだぞくぞくと集まってくる将士があるらしい。出陣を触れる貝が、日の出までに、幾たびか、甲府の町々を呼びさましていた。
ゆうべ手枕で一睡したのみであった勝頼は、もう全身を鎧って、すこしも眠たげなものを顔に留めていなかった。人いちばいな健康と、大きな将来への夢は、彼の肉体に、今朝の新緑のような若い露をたたえていた。
父の信玄が亡い後も、この三年間、彼は一日だに、安閑としてはいなかった。
甲山峡水の守りは固いけれど、遺封をついで、それに甘んじているべくは、余りに彼の胆略と武勇は、父以上に備わりすぎている。
勝頼は、名門の出に多い、いわゆる不肖の子ではなかった。
むしろ、自負と、責任感と、天質の勇武があり過ぎたといっていい。