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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
「オオ。何やらちと退屈をおぼえた、そちを相手に、象戯でもさそうかと思うて。盤をこれへもて」
妙なことがあるものと、又四郎は変に思ったが、主命なので、象戯盤を持って来た。
「久しく手にせぬから、そちには敵うまいな。……そちは陣中でもよくやりおるそうだから」
駒をならべ始めた。そして家康はまたうしろを見て、
「小姓たちもみなも、次へ退って休息しておるがいい。下手象戯をのぞかれると、よけい気が惑うていかぬもの」
と、笑って云った。
(おまえは陣中でもよく象戯をさしているそうだから、さだめし強いだろう)
さむらいが主君からこんな賞め方をされるのは名誉でないはずだが、石川又四郎にとっては、尠なくも不名誉ではなかった。
それには、こんな理由があるからである。
或る年の合戦に、家康は、敵の小城を取り詰めて、自身たびたび攻め口を巡視していた。
するといつも、城壁の上から、家康のほうへお尻を向けて、叩いて見せる敵兵がある。
「憎いやつだ」
家康は舌打ちして通ったが、翌日通ると、また塀の上にその尻が見える。頻りと叩いている様子である。
「たれぞ、あの醜しいものを、射落せ」
供の中にいた石川又四郎が、はッと答えながら、斜めに弓を持って、駈け出して行った。