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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
初めは、静かだった。
家康と又四郎とで、何か、密談でもしているふうであった。
そのうち、象戯の駒音が、すこし聞えた。と思うと、まもなく、
「無礼であろう」
「無礼ではありません」
「いまの手は待て」
「待てません」
「主にたいして、そちは」
「たとえ、盤上の遊戯でも、勝敗のこと、主従の別はないはずでござる」
「強情なやつ。待たぬか」
「御卑怯でござる」
「こやつ、卑怯といったな、主にたいして」
大声で争いが始まったと思ううちに、家康の声で、おのれッと、起ち上がった様子。
つづいて、盤の駒が、一面に飛んだような物音と共に、大廊下のほうへ、だだだだと、逃げてゆく跫音がした。
「捕えろ、又四郎めをッ」
追いかけながら、家康はあたりへ怒号した。手に脇差を抜いている。
「殿ッ、殿。いかがなされましたか」
駈けつけて来る家臣たちへ、家康は口を極めて怒りをもらした。象戯をさしているうちに、いつか主従の見さかいも忘れ、余りに暴言を吐くので、懲らしめてくれようとしたところ、さらに悪罵を放って、逃げて行ったというのである。
「近ごろ、わしの恩寵に狎れすぎて、図に乗っていた又四郎のやつ。是が非でも引っ捕えて、窮命申しつけねばならん。