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ふたりのとも

新潮日本文学1 森鴎外集

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《新潮日本文学1 森鴎外集(ふたりのとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,954 字 · 29 頁

青空文庫

若し人違であったら、許して貰いたい。恋しい兄だという思う人を見たのに、逢って物を言わずに別れては、後々まで残惜しい。一体あなたはどちらのお方かと云うのであった。君はこう答えた。

「それは気の毒な事だ。僕は石州のもので、尾の道へは始めて来た。ここへ来たのが知れるといけないから、早く帰るが好い」と云ったと云うのである。

F君のこの話を、私は面白く思って聞いた。私の悟性から見れば、初め君が他人の空似は有るものだと云ったのは反語でなくてはならない。芸者が臥所へ来た時、君は浜路に襲われた犬塚信乃のように、夜具を片附けて、開き直って用向を尋ねた。さて芸者の詞を飽くまで真面目に聞いて、旨く敬して遠ざけたのである。君が語り畢る時、私は君の面を凝視して、そこに Ironie の表情を求めた。しかしそれは徒事であった。

F君は芸者の詞を真実だと思って、そのまま私に話したのであった。私は驚いた。そして云った。「日本の女は横著なようで、おとなしい。それが西洋人であったら、きっと肉迫して来たのだ。すると君だって、Wilhelm が Philene の胸を押し退ける勇気がなかったように、女の俘になるのだった。