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ふたりのとも

新潮日本文学1 森鴎外集

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《新潮日本文学1 森鴎外集(ふたりのとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,954 字 · 29 頁

青空文庫

すると二階の向側に泊った客が、芸者を大勢呼んで大騒をしていた。君は無聊に堪えぬので、廊下に出て向うを見る。向うでも芸者が一人出て、欄干に手を掛けてこっちを見る。その芸者が連の芸者を呼び出す。二人で何かささやいてこっちを見る。こっちで見るのは好いが、向うから見られるのは厭だと思って、君は部屋に這入った。向側の騒ぎは夜遅くなるまで続いた。君は床に這入って、三味線の声をやかましく思いつつ寐入った。暫く寐ているうちに、部屋に人が来たように思って目を醒ました。見れば芸者が来て枕元にすわっている。君は驚いて起き上がった。そして「どうしたのだ」と問うと、「少し伺いたい事がございます」と云う。君は立って夜具を畳んだ。それから芸者に用事を尋ねた。芸者の口上はこうであった。自分は向側の座敷に、大勢来て泊っている芸者の中の一人である。この土地の生れで、兄が一人あった。それが家出をして行方が知れずにいる。然るに先刻向側からあなたを見て、すぐにその兄だと思った。分れてからだいぶ年が立ったが、毎日逢いたい逢いたいと思うので、こっちでは忘れずにいる。あなたを見た時、すぐに馳けて来ようかと思ったが、人目があるのでこらえていた。