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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
女の方では困った事になってしまったなあと思った事もあるに違いない。男の方では段々と執着が増していったのだ」
と至極ありふれた解釈を、手やすく下してしまった。普通それが早分りのする人情世故に通じた一般的のものだけに、金持ちや、物分りのいいという世間学通の人たちのいう事はこれと一致した。そしてこれらの人々の皮相な解釈ほど、人間本然の心の秘密から遠いものはなく、したがってこれらの人々の、その人自身の心の生活ほど貧しいものはない。
生命を取りとめた――再び春の日の光を、病院の窓に眺めた彼女の意識にのぼったものは、まず何であったろう。いうまでもない倉持の最後のきわの絶叫でなければならない。彼女は混沌たる状態のおりからも彼れの名を無意識に叫んだが、自分がこの世に生残ったと知ると、心にかかるのは彼れの身の上であった。けれども、彼女の恢復しかけた意識は例によって、血潮の洗礼を受けたあとでも因襲道徳に囚えられていた。それを明瞭と聞きただす勇気はなくって、いたずらに悶え苦しんだ。彼女はおりおり堪え兼たように、
「帰るのだから自動車を呼べ」
と附添いのものに命じた。
自動車といえば倉持に密接な関係があるゆえ、それによって彼れの生死いずれかの安否が聞けるものと思ったらしかった。