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かえるのゴムぐつ

新編風の又三郎

宮沢 賢治

線上閱讀宮沢 賢治《新編風の又三郎(かえるのゴムぐつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,031 字 · 84 頁

青空文庫

よしか。」

林の中は又しいんとなりました。さっきの汽車が、まだ遠くの遠くの方で鳴っています。

「爾の時に疾翔大力、爾迦夷に告げて曰くと、まづ疾翔大力とは、いかなるお方じゃか、それを話さなければならんじゃ。

疾翔大力と申しあげるは、施身大菩薩のことじゃ。もと鳥の中から菩提心を発して、発願した大力の菩薩じゃ。疾翔とは早く飛ぶということじゃ。捨身菩薩がもとの鳥の形に身をなして、空をお飛びになるときは、一揚というて、一はばたきに、六千由旬を行きなさる。そのいわれより疾翔と申さるる、大力というは、お徳によって、たとえ火の中水の中、ただこの菩薩を念ずるものは、捨身大菩薩、必らず飛び込んで、お救いになり、その浄明の天上にお連れなさる、その時火に入って身の毛一つも傷かず、水に潜って、羽、塵ほどもぬれぬという、そのお徳をば、大力とこう申しあげるのじゃ。されば疾翔大力とは、捨身大菩薩を、鳥より申しあげる別号じゃ、まあそう申しては失礼なれど、鳥より仰ぎ奉る一つのあだ名じゃと、斯う考えてよろしかろう。」

声がしばらくとぎれました。林はしいんとなりました。ただ下の北上川の淵で、鱒か何かのはねる音が、バチャンと聞えただけでした。