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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《日本の伝説(にほんのでんせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 頁

青空文庫

(横須賀郷里雑記。静岡県小笠郡中浜村国安)

このようなつまらぬ小さな遊び方でさえも、なお地蔵さまの像よりはずっと前からあったのであります。昔というものの中には、かぞえ切れないほど多くの不思議がこもっています。それをくわしく知るためには、大きくなって学問をしなければなりませんが、とにかくに大人のもう忘れようとしていることを、子供はわけを知らぬために、却って覚えていた場合が多かったのであります。木曽の須原には、射手の弥陀堂というのがありました。もとは春の彼岸のお中日に、この宿の男の子が集って来て、やさいこといって小弓をもって、阿弥陀の木像を射て、大笑いをして帰るのがお祭りであったそうです。(木曽古道記。長野県西筑摩郡大桑村須原)

仏像を射るということは、大へんなことですが、これにも神様が目をお突きになったという類の、古い伝説があったのかも知れません。越後の親不知の海岸に近い青木阪の不動様は、越後信州東京の方の人は、不動様といって拝み、越中から西の人は、乳母様と称えて信心していました。お寺では今から四百年ほど前に、野宮権九郎という人が海から拾い上げた仏様だといいますが、土地の人は、もとからこの沖の小さな島に、子産み殿といって祀ってあった神様だと思っていまして、字を知らぬ人のいった方がどうも正しいようであります