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いっすんぼうし

日本の古典童話

楠山 正雄

線上閱讀楠山 正雄《日本の古典童話(いっすんぼうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,747 字 · 50 頁

青空文庫

五

若者は、下男の姿が遠くに見えなくなるまで見送りました。それからそこの清水で手を洗いきよめて、長谷寺の観音さまの方に向いて手を合わせながら、

「どうぞこの馬をもとのとおりに生かして下さいまし。」

と、目をつぶって一生懸命にお祈りをしました。

そうすると死んでいた馬がふと目をあいて、やがてむくむく起き上がろうとしました。若者は大そうよろこんで、さっそく馬の体に手をかけて起こしてやりました。それから水を飲ませたり、食べ物をやったりするうちに、すっかり元気がついて、しゃんしゃん歩き出しました。

若者は、近所で布一反の代わりに、手綱とくつわを買って馬につけますと、さっそくそれに乗って、またずんずん歩いて行きました。

その晩は宇治の近くで日が暮れました。若者はゆうべのようにまた布一反を出して、一軒の家に泊めてもらいました。

その明くる朝早くから、若者はまた馬に乗って、ぽかぽか出かけました。もう間もなく京都の町に近い鳥羽という所まで来かかりますと、一軒の家で、どこかうち中よそへ旅にでも立つ様子で、がやがやさわいでおりました。若者はふと考えました。

「この馬をうかうか京都まで引っ張って行って、もし知っている者にでも逢って、盗んで来たなぞと疑われでもしたら、とんだ迷惑な目にあわなければならない。