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いっすんぼうし
日本の古典童話
楠山 正雄
線上閱讀楠山 正雄《日本の古典童話(いっすんぼうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,747 字 · 50 頁
それを家来たちがじゃまにしてどけようとして、がやがや騒ぎました。その声を聞いて鉢かつぎが、ふとそちらを見ますと、それは見るかげもなくやつれてはいるものの、まぎれもない昔のおとうさんでした。
鉢かつぎはびっくりして、ころがるようにしてそばへ寄って、
「まあ、おとうさま、鉢かつぎでございます。」
といいますと、その坊さんは長い夢からふと覚めたような、きょとんとした目つきをしていましたが、やがて、
「ああ、姫か。よく忘れずにいてくれた。」
というなり、しっかりと姫の手を握りしめて、涙をはらはらとこぼしました。
おとうさんは鉢かつぎを追い出して後、だんだん運が悪くなって、貧乏になりました。たくさんいた家来たちも、奥方が意地の悪いことをするので、逃げていってしまいました。おとうさんは日ましに鉢かつぎが恋しくなって、どうかしてもう一度会いたいと思って、坊さんの姿になり、方々その行方をたずねて、迷い歩きました。さんざん諸国をめぐり歩いた末、とうとうおしまいに、長谷の観音さまは、亡くなったおかあさんの信心した仏さまだから、また願ったら、きっと娘に会わせて下さるだろうと思って、ここまでやって来たのでした。