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なかじきり

日本の文学 2 森鴎外(一)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 2 森鴎外(一)(なかじきり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,092 字 · 45 頁

青空文庫

日本は芸術の国ではない。

渡辺はしばらくなにを思うともなく、なにを見聞くともなく、ただ煙草をのんで、体の快感を覚えていた。

廊下に足音と話し声とがする。戸が開く。渡辺の待っていた人が来たのである。麦藁の大きいアンヌマリイ帽に、珠数飾りをしたのをかぶっている。鼠色の長い着物式の上衣の胸から、刺繍をした白いバチストが見えている。ジュポンも同じ鼠色である。手にはウォランのついた、おもちゃのような蝙蝠傘を持っている。渡辺は無意識に微笑をよそおってソファから起きあがって、葉巻を灰皿に投げた。女は、附いて来て戸口に立ちどまっている給仕をちょっと見返って、その目を渡辺に移した。ブリュネットの女の、褐色の、大きい目である。この目は昔たびたび見たことのある目である。しかしそのふちにある、指の幅ほどな紫がかった濃い暈は、昔なかったのである。

「長く待たせて」

ドイツ語である。ぞんざいなことばと不吊合いに、傘を左の手に持ちかえて、おうように手袋に包んだ右の手の指さきをさしのべた。渡辺は、女が給仕の前で芝居をするなと思いながら、丁寧にその指さきをつまんだ。そして給仕にこういった。