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なかじきり

日本の文学 2 森鴎外(一)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 2 森鴎外(一)(なかじきり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,092 字 · 45 頁

青空文庫

まるっきりなしというわけにはいきませんわ」

「知れたことさ。そこで東京へも連れて来ているのかい」

「ええ。一しょに愛宕山に泊まっているの」

「よく放して出すなあ」

「伴奏させるのは歌だけなの」Begleiten ということばを使ったのである。伴奏ともなれば同行ともなる。「銀座であなたにお目にかかったといったら、是非お目にかかりたいというの」

「まっぴらだ」

「大丈夫よ。まだお金はたくさんあるのだから」

「たくさんあったって、使えばなくなるだろう。これからどうするのだ」

「アメリカへ行くの。日本は駄目だって、ウラヂオで聞いて来たのだから、あてにはしなくってよ」

「それがいい。ロシアの次はアメリカがよかろう。日本はまだそんなに進んでいないからなあ。日本はまだ普請中だ」

「あら。そんなことをおっしゃると、日本の紳士がこういったと、アメリカで話してよ。日本の官吏がといいましょうか。あなた官吏でしょう」

「うむ。官吏だ」

「お行儀がよくって」

「おそろしくいい。本当のフィリステルになりすましている。きょうの晩飯だけが破格なのだ」

「ありがたいわ」さっきから幾つかのボタンをはずしていた手袋をぬいで、卓越しに右の平手を出すのである。