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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

さていよいよ移住と決心して出てからも、一時は千駄谷にいたが、下邸に火事があってから、はじめて五番町の売居を二十九枚で買った。

お佐代さんを呼び迎えたのは、五番町から上二番町の借家に引き越していたときである。いわゆる三計塾で、階下に三畳やら四畳半やらの間が二つ三つあって、階上が斑竹山房の額を掛けた書斎である。斑竹山房とは江戸へ移住するとき、本国田野村字仮屋の虎斑竹を根こじにして来たからの名である。仲平は今年四十一、お佐代さんは二十八である。長女須磨子についで、二女美保子、三女登梅子と、女の子ばかり三人出来たが、かりそめの病のために、美保子が早く亡くなったので、お佐代さんは十一になる須磨子と、五つになる登梅子とを連れて、三計塾にやって来た。

仲平夫婦は当時女中一人も使っていない。お佐代さんが飯炊きをして、須磨子が買物に出る。須磨子の日向訛りが商人に通ぜぬので、用が弁ぜずにすごすご帰ることが多い。

お佐代さんは形ふりに構わず働いている。それでも「岡の小町」と言われた昔の俤はどこやらにある。このころ黒木孫右衛門というものが仲平に逢いに来た。もと飫肥外浦の漁師であったが、物産学にくわしいため、わざわざ召し出されて徒士になった男である。