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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁
路で出合う老幼は、皆輿を避けてひざまずく。輿の中では閭がひどくいい心持ちになっている。牧民の職にいて賢者を礼するというのが、手柄のように思われて、閭に満足を与えるのである。
台州から天台県までは六十里半ほどである。日本の六里半ほどである。ゆるゆる輿を舁かせて来たので、県から役人の迎えに出たのに逢ったとき、もう午を過ぎていた。知県の官舎で休んで、馳走になりつつ聞いてみると、ここから国清寺までは、爪尖上がりの道がまた六十里ある。往き着くまでには夜に入りそうである。そこで閭は知県の官舎に泊ることにした。
翌朝知県に送られて出た。きょうもきのうに変らぬ天気である。一体天台一万八千丈とは、いつ誰が測量したにしても、所詮高過ぎるようだが、とにかく虎のいる山である。道はなかなかきのうのようには捗らない。途中で午飯を食って、日が西に傾きかかったころ、国清寺の三門に着いた。智者大師の滅後に、隋の煬帝が立てたという寺である。
寺でも主簿のご参詣だというので、おろそかにはしない。道翹という僧が出迎えて、閭を客間に案内した。さて茶菓の饗応が済むと、閭が問うた。「当寺に豊干という僧がおられましたか」