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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

道翹が答えた。「豊干とおっしゃいますか。それはさきころまで、本堂の背後の僧院におられましたが、行脚に出られたきり、帰られませぬ」

「当寺ではどういうことをしておられましたか」

「さようでございます。僧どもの食べる米を舂いておられました」

「はあ。そして何かほかの僧たちと変ったことはなかったのですか」

「いえ。それがございましたので、初めただ骨惜しみをしない、親切な同宿だと存じていました豊干さんを、わたくしどもが大切にいたすようになりました。するとある日ふいと出て行ってしまわれました」

「それはどういうことがあったのですか」

「全く不思議なことでございました。ある日山から虎に騎って帰って参られたのでございます。そしてそのまま廊下へはいって、虎の背で詩を吟じて歩かれました。一体詩を吟ずることの好きな人で、裏の僧院でも、夜になると詩を吟ぜられました」

「はあ。活きた阿羅漢ですな。その僧院の址はどうなっていますか」

「只今もあき家になっておりますが、折り折り夜になると、虎が参って吼えております」

「そんならご苦労ながら、そこへご案内を願いましょう」こう言って、閭は座を起った。