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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
婆さんもともに声をかけて、
「姉さん、なんもそないに遠慮せんかてよろしい。さあさあそなとこにおらんとずっとこちらへお上りやす。きつう寒うおす」
彼女が、そうしたまま、いつまでも家の人たちに口をきかしているのを傍にいて見かねながら、私もそちらを振り顧って、
「皆さんがいうて下されるのだから早うこちらへ上がったがいいだろう」と、声をかけながら、そこに佇んだ容姿をちらと見ると、蒼ざめた頬のあたりに銀杏返しの鬢の毛が悩ましく垂れかかって、赤く泣いた眼がしおしおとして潤んでいる。
女はなおも面羞そうな様子をしながら、
「わたし、もう、ここで失礼いたします」と、口の中でいって、上がろうとせぬ。
主人も婆さんも、声をそろえて、
「何おいやす、姉さん。そんなとこにいられしまへん。さあさあ」と急いだ。
女は、「へえ」と腰をこごめながら、それでやっと、「ほんならここからどうぞごめんやす」と沈み沈み言って、上り框に躙り上がって、茶の間の板の間のところに小さくなって坐った。主人はそれを咎めるように、
「姉さん寒いのに、そんなとこにおられしまへんたら、さあこちらへおいでやして、兄さんの傍に来て火鉢におあたりやす」