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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

と手を取らんばかりに世話を焼いた。

女は幾たびもいくたびも催促せられて、まだ泣きじゃくりをしながら、ようよう座蒲団の上まで寄ってきた。

主人は、合壁の隣りに居残っている母親に気を兼ねて、声をひそめ、二人の仲を改めて取りなすような口を利いて、

「さあ、姉さん、ここは私の内どす。もう誰に遠慮もいりまへんよって、兄さんと心置きのう話したい思うておいでやしたことをお話しやす」

そういったが、彼女は、何といわれても、ただ「へえ、へえ」と、低い声でいうのみで、憂わしそうに湿っている。

私も、あれほど会いたい、見たいと思っていながら、そうして面と顔を差し向ってみると、即座に何からいい出していいやらいいたいことがあり余って、かえって何にもいいえないような気がして、初心らしくただ黙っていると、主人は、小言のように、

「さあ、兄さんも何とか姉さんに言葉をかけてお上げやす」と言ったが、二人ともそのままやっぱり黙っていた。

そこでかえってそこにいて用のない生酔いの婆さんが傍からまたしてもうるさく口出しをするのを、彼女も私も同じ思いで、神経に障るように自然と顔に表わしていた。