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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
私は何を言うかと思いながら、
「それならそれでいいから、私また一週間ばかりして来るから、その時分までよく考えておいてくれたまえ」そういってそこの待合を出た。
柳沢は行ってはいなかった。
じゃ、いろいろ思いまわしたのが自分の邪推であったろうか、邪推としたら自分は厭な性質をもっている。私自身他人から邪推せられた時ほど厭な心持ちのすることはない。自分はそんな邪推をするような人間を何よりも好かぬ。そんなことを考え考えその晩は加藤の二階に戻って来た。
それから二、三日たって、それでもまだやっぱり柳沢とお宮との間が気になるので柳沢の家にいって見た。
すると柳沢は階下の茶の間で老婢に給侍をさせながら御飯を食べていたが、
「この間うち家にいなかったな」と、いいながら私は火鉢の横に坐った。
「うむ」と、いいながら柳沢は黙って飯を喰っている。
飯が済んでから柳沢は、
「僕は鎌倉へしばらく行って来るつもりだ」と、いう。
「そりゃ好いなあ。いつ?」
「いつって、今日か明日か分らない」
「あれからお宮に会わないかえ?」私は微笑しながら訊ねた。
「会やしないさ」柳沢は苦い顔をしていった。