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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

「ランプ掃除をしていた神楽坂の女はどうした?」

「あれは、あれっきりさ」

「だってちょっと好い女じゃないか」

「あんまりよくもない。……彼女なら君にゆずってもいい」柳沢は戯談らしゅう笑いながらいった。

私は、はて変なことをいうなあ。と心のうちで思った。

彼女なら君にゆずってもいいというのは、彼女でない女があるということだ。それはお宮のことである。じゃ、やっぱりお宮のことを柳沢は思っているのだな。そう思いながら私は、

「いや、別に僕はあの女が欲しいのじゃないが」といって笑いながら、

「やっぱりお宮の方が僕は好きだ」と、柳沢の思っていることに気のつかぬもののように無邪気にいった。

「……お宮はどうしても小間使というところだな。……それに襟頸が坊主襟じゃないか」と、柳沢は口の先でちょいとくさすようにいう。

「うむ。それからあの耳が削いだような貧相な厭な耳だ」私も柳沢に和してお宮を貶した。

「とにかくよく顔の変る女だ」

「うむ、そうだ。君もよく気のつく人間だなあ。実によく顔の変る女だ」

まったくお宮は恐ろしくよく顔の変る女だった。

ややしばらくそんな話しをしていた。

「もう出かけるのか」