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にほんのび

日本の美

中井 正一

線上閱讀中井 正一《日本の美(にほんのび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 96,126 字 · 187 頁

青空文庫

囲みゐて 憂へ吟ひ

かまどには 火気ふき立てず

こしきには くもの巣かきて

飯炊ぐ 事も忘れて

ぬえどりの のどよひをるに

いとのきて 短きものを 端切ると いへるが如く

しもと取る 里長が声は

寝屋戸まで 来立ち呼ばひぬ

かくばかり 術なきものか 世間の道

世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

この歌に見えるごとく、「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」この句ができる背後には、人生の真実を見る目が、かくのごとく冷たく、澄み透って、横たわっていたのであります。

山上憶良は、唐の都長安まで、いったことのある人であって、深い学問と、芸術による真実を見る目が、かかる歌の精神を導きだしたといえるのであります。かかる精神はすでに、後の『源氏物語』『古今集』に現われる「もののあわれ」とでもいうべき精神につながっていると、私は思うのであります。

源氏の須磨の絵日記でいうように、芸術への態度は、いわば、深いせつなさをもって、物に対決しているのであります。「かかる上手の心の限り、おもひすまして静かにかき給へるは……」という、沈潜する態度を「もののあわれ」