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せっしょうせき

日本の諸国物語

楠山 正雄

線上閱讀楠山 正雄《日本の諸国物語(せっしょうせき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 頁

青空文庫

安達が原

一

むかし、京都から諸国修行に出た坊さんが、白河の関を越えて奥州に入りました。磐城国の福島に近い安達が原という原にかかりますと、短い秋の日がとっぷり暮れました。

坊さんは一日寂しい道を歩きつづけに歩いて、おなかはすくし、のどは渇くし、何よりも足がくたびれきって、この先歩きたくも歩かれなくなりました。どこぞに百姓家でも見つけ次第、頼んで一晩泊めてもらおうと思いましたが、折あしく原の中にかかって、見渡す限りぼうぼうと草ばかり生い茂った秋の野末のけしきで、それらしい煙の上がる家も見えません。もうどうしようか、いっそ野宿ときめようか、それにしてもこうおなかがすいてはやりきれない、せめて水でも飲ましてくれる家はないかしらと、心細く思いつづけながら、とぼとぼ歩いて行きますと、ふと向こうにちらりと明りが一つ見えました。

「やれやれ、有り難い、これで助かった。」と思って、一生懸命明りを目当てにたどって行きますと、なるほど家があるにはありましたが、これはまたひどい野中の一つ家で、軒はくずれ、柱はかたむいて、家というのも名ばかりのひどいあばら家でしたから、坊さんは二度びっくりして、さすがにすぐとは中へ入りかねていました。