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あゆむ
日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)
戸田 豊子
線上閱讀戸田 豊子《日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)(あゆむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,183 字 · 44 頁
子供のように掛布団をはね上げて膝を立てていた、洋服を脱がしてやった方がよかったと思った。
九時になったが起さずにその儘にして置く。
スタンドの下へ頭を突きだし、両手で額を支えて、農業問題に関する論文を読み耽った。とも子は時々振返って兄の寝顔を眺めた。
「これは非常に珍らしい。殆んど何年振りかのことだ、一つの部屋で兄の寝顔を見るなんて――」
貧乏人は親子ちりぢりに働かなくては食ってゆけない、――兄は小学卒業と同時に奉公に出された、それから転々とあの労働からこの労働と渡り歩いて、郷里へも何年も帰ってないし、恐らく母だって息子の寝顔がどうだったかなんて事を、もう忘れちまってるだろう。
彼女は「何も要らない、ただ子供等が優しい言葉を掛けてくれさえすれば」と思ってるのかも知れないのだが――母のことというと、布団をたたんだような恰好に平べったく坐り、畳の目ばかり見てるような、毎もそんな姿だけが眼に浮ぶ。それはとも子自身も、永いこと郷里へ帰らないでる故かも知れない。
階下のお内儀さんが襖の外から声をかけた、
「お客様ですよ平井さん」
裏口の明りの中で見知らぬ洋服の男が二人立っていた。