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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,672 字 · 20 頁

青空文庫

関白秀吉が薨じて、今また世間はなんとなく風雲をはらんできた、にわかにその存在の大きさをはっきりさせはじめた徳川氏と、太閤の遺児秀頼を擁する勢力とが、眼にみえぬ怒濤となってあい鬩いでいる。いつどこから火を発するかもしれない。ことに今度の上杉討伐のいくさは徳川氏がその全勢力をあげて東征している、関西のまもりはがらあきなのだ、秀頼を擁する人々が事をおこすにはうってつけの機会である、これを思いかれを想うとき、松子には安房守昌幸がどこまで徳川氏についてくるか案じられた、いざという場合にはまた敵にまわるのではないか、そういう不安が良人への苦言となってあらわれたのである。

信之はついになにも云わずに出ていった、そして松子はそのあとで自分の言葉を悔いた。たとえ父昌幸がどうあろうと良人の徳川家に対する志操に変りのある筈はない、それは妻である自分が誰よりもよく理解している。理解していながら念を押したのはあさはかな疑いになるし、疑いと云わなければさかしらだてである、松子はそう気づくとともにあのとき黙ってなにも云わなかった良人の心が、いかにもたのもしくゆかしく思いかえされ、すぐに詫びの手紙を書く気持になったのである。