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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,170 字 · 22 頁
二
両親はなかったが多助という兄がすぐ近在に百姓をしていて、三年ほどまえから度たび、「良縁があるからお暇を頂くように」と云って来たが、おかやはまだ早すぎると答えるばかりで、到頭その頃としては婚期に後れたといってもよい年まで新沼家に奉公し続けて来たのだった。……病める妻と乳呑み児を抱え、五歳の長男を育てる生活はなまやさしいものではなかった。医者から病ちゅう授乳を止められたので、日に三度ずつ乳貰いをして、あとは重湯や水飴を与えるのだが、それを薄めたり温めたりする加減が、男の手ではなかなか旨くゆかないし、襁褓や肌着の取替え、病人の看護、炊事、洗濯など、実際に当ってみるとなにもかも男ひとりの手には余る事ばかりであった。おかやがいて呉れなかったらどうしたろう、靱負はそう思うだけで、背筋の寒くなるようなことが度たびだったのである。
二
松山の蒲生家に仕えようという同じ希望をもった人びとの多くがこのあいだに二人三人と欠けていった。それは連絡をとっている松山藩の老職から思わしい知らせがなく、いつになったら望みが協えられるか段だん不安になりだしたからだ。臣之助の急死に次ぐ妻の死で、暫く虚脱したような状態にいた靱負は、そうして仲間から欠けてゆく人たちを見送りながら、やがて、――これは便々とこんな処で待っている時ではない、ということ