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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

」

と私が悦んでいうと、おかみさんとお亭主が笑っていった。

「お砂糖はいれてないけれど、絞りたての甘いのをあげたのさ。」

こんな風におばあさんはよく私を連れて他家へいった。私が本を読みたがると、何処からか聞きだしてきてくれて、私を貸本屋へつれてゆくといった。

毎日二時過ぎると小さなお釜でお湯を湧して、盥へ行水のお湯をとってくれた。私は裏からも表からも見透しの場処でのんきに盥の中へ座る。雨蛙にもお湯をぶっかける。大きな山蟻が逃出すのを面白がる。或時は蟇と睨めっこしながら盥の中にかしこまっている。涼しい風にくしゃみをするとおばあさんが声をかける。

「さあ、もういいよ。」

汗知らずをまだらにはたきつけて貸本屋さんへ出かける――

貸本屋も御隠居処なのである。寒竹の垣根つづきの細道を、寒竹の竹の子を抜きながらゆくと何処でか藪鶯が鳴いている。カラカラと、辷りのいい門の戸をあけると、踏石だけ残して、いろとりどりな松葉牡丹が一面。軒下に下っている鈴をならすと、切髪の綺麗な女隠居が出てきて、両手を揃えて丁寧におじぎをした。

『妙々車』『浅間嶽』などが私の膝の前に高く積み重ねられた。