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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
その時分、定さんという人がよく傭われてきたものだ。輝国が絵――人物や背景を描くと、その人は、軒だとか窓だとか、縁側だとか、襖とかいったものの、模様や線をひきにくる。腕はその当時いい男だといわれていたのに、弁当も自分持ちで、定木も筆も持参で来て、ひどい机だけかりて仕事をして、それで一日がたった天保銭一枚(当時の百文・明治廿年代まで八厘)。今の人がきくと嘘のようだろう。
寿鶴亭という八人芸(時雨云、拙著『旧聞日本橋』の中には、この寿鶴の名が思いだせないで○○斎と書いたのと同じ人)の上手なのがすぐ近所にいた。娘に、油町の辻新という大店の権助を養子にして舂米屋をさせ、自分たちは二階住居をしていた。賑やかな人で、自分の家の二階で八人芸をやっていると、まったく瞞されるほど、大勢寄っているようにきこえた。かみさんは新宿あたりの上りもの(遊女の)で、強者だった。孫娘のおつるというのを手塩にかけて育てていたが、それが後に妾にいって大層出世をしたとかきいた。たしか、大鳥圭介さんのところへだときいた。
辻新といえば、あすこの家の頭――出入りの鳶職――が、芝金の直弟子で、哥沢の名とりだった。