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わせだだいがく

早稲田大学

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《早稲田大学(わせだだいがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,204 字 · 220 頁

青空文庫

この日、三島は全市にわたって彼の管轄下にある巡査の非番召集を行い、忘年会という名目で部下を芝公園にあつめ、酒樽をならべて冷酒を饗応し、彼自らも痛飲した上で、出動を命じた警官隊を激励した。「諸君は威信をもって事を行うことを忘れてはならぬ、もし不逞の徒が命令を拒み、あるいは反抗した場合は一刀の下に斬り捨てても差支えない」。

退去命令をうけた人たちは一言半句の抗弁も釈明もゆるされず、家族と別れを惜しむ余裕もなく、ほとんど着のみ着のままで、何処をあてともなく東京を去っていった。氷雨の降る夜の街には不穏な妖気が漂い、不安と動揺の中に明治二十年の大晦日が近づいてきた。三島通庸の手によって発せられた保安条例は、当然民衆の力によって葬り去らるべき政府の運命を僅かに数ヶ月持ち越したというだけのことで、その意味においては鬼総監の勇断はたしかに効果を奏したと見るべきであろう。しかし、この暴圧がもたらしたものが逆のかたちを示すことぐらいは伊藤博文ともあろう男にわからぬ道理はない。伊藤にしてみれば、このような、だしぬけに生じた最悪の状態の下に彼の内閣を瓦解させたくはなかった。