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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 頁

青空文庫

駒守は目がなくては歩くこともできないから、同じ覆面でも、目があった。

光子が兄を(戸籍上ではイトコだか叔父だかに当るわけだが)を見たのは、兄が十八、自分が十二の時であった。そのとき、彼女の一家は、祖父をはじめ父母兄弟に至るまで、そっくり東京の別宅へ移住したのである。それは田舎住いが子女の教育に不適当であったからだ。族長というものは、常に土地に用のあるものではない。年に何回という古来の定まった行事にちょっと必要なだけであるから、そのときだけ帰郷すれば足るのである。

覆面の祖父は村をでるとき馬にまたがっていた。それは魔王の旅立つように、威あり怖しいものに見えたのである。同じように覆面を胸まで垂れた風守はカゴにのった。そして、あたりの病毒ある風から防ぐように、カゴの窓を下したのである。光子が見た兄は、その旅行のときだけであった。

東京の別荘は、小石川の崖の上の二万坪もある邸内に建物も庭も新しく造ったばかりのものであった。風守のためには別館が用意されていた。それは母屋から遠く離れて塀によって隔離され、まったく別の一戸をなしていた。ウバのヨシエと、老女中の政乃が村に於けると同じように、この別館に住み、風守に侍っていたのである。