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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 頁

青空文庫

とにかくバラバラの屍体のころげている方向によって、下りの汽車がひいたことだけは分っている。下りの夜汽車は国府津発午後七時十分という神戸行が一ツ。そのあと貨車が一度通っているだけだ。

調査の結果、神戸行の客車の方だということが車輪の血シブキで分ったが、この運転手は非常に臆病な男で、いつ轢いたか、知らぬ存ぜぬで押し通してしまった。ガタッという大きなショックに、見習いのカマタキの少年が、ハッと運転手をふりむいて、

「なにか、ひきましたぜ」

ときくと、運転手は言下に強く否定したが、その顔はまッ蒼だった。それから神戸へ着くまでというもの、少年がプラットホームへ一足おりると、

「オイ。どこへ行く?」

ときいて、少年が便所へ行けば彼も一しょに行き、決して一人だけ取り残されないように必死につとめる様子であったという。そして当局の取調べにも、徹頭徹尾知らぬ存ぜぬ、気がつきませぬ、で押し通した。彼の臆病は有名だったし、彼に罪があるわけでもないから、それで通った。これも運転手君同様物を言わぬが車輪にハッキリ証拠がある。そこを汽車が通るのは午後七時二十分だ。日がくれて四十分くらいしかたたない時刻である。