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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,336 字 · 47 頁

青空文庫

お前が行李をつむと、別荘番が二円の祝儀をくれるから、お前は一ッ走り、十時前に本邸へ届けなさい」

「ヘイ。それだけで?」

「それだけだ。急いで行け」

と、青年紳士は上野駅の方へ去ってしまった。切り通しを登って三丁目をすぎれば、すぐ真砂町。中橋別荘の門前へ走りついた捨吉が、閉じた門を四五分もヤケに叩いて大声はりあげて案内を乞うと、ようやく門をあけて現れた別荘番の老人が、

「今、門をしめたばかりだというのに、お前はさっきの車夫か」

「さっきの車夫だか、いつの車夫だか知らないが、ごらんのような車夫でさア。本宅へ届ける行李を受けとりに来やしたから、二円の御祝儀をいただきやしょう」

祝儀がよいから、捨吉はせいぜい愛想笑いのようなものをフンパツしてみせる。老人は行李をつませて、二円を与えたが、捨吉が礼を云うと、ブリブリして、

「オレに礼を云うことはない。人を馬鹿にしておる。さッさと行け」

「ヘイ」

二円もらえば、文句はない。捨吉は老人の小言をきき流して門をでたが、切り通しを降りるころから考えた。浜町といえば、そう遠くはない。一ッ走り、届けるのは何でもないが、二円の祝儀がタダゴトではない。