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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 頁

青空文庫

と津右衛門は笑ったものだ。

千代は今までそういうことを気にかけなかったので、この家に関係ありという人物が誰であるか、それを知ることなどは津右衛門の死後も忘れていた。

しかし、今、こうして実父と実兄が、言葉巧みな方法で、この家を我が手に収めようとするのに気付くと、ここに何かがあるナと気がついた。即ち、父と兄は見破ったのだ。東太はまだ幼少であるから、云うまでもなく父の語り伝えをうけていない。とすれば、瀕死の父は、その語り伝えを残さなければ、死んでも死にきれなかったろう。彼があの断末魔ののたうちまわる苦悶の中で、右手を必死に動かしていたのは、その語り伝えの内容を暗示しようとしていたのだ。

天鬼はまるで気違いのように津右衛門の死にゆく様のマネをしたではないか。よほど重大な理由がなければ、あのように必死に、あのように愚かな所業のできるものではない。天鬼は瀕死の津右衛門が必死に指し示した方向に、村人の噂に高い金箱の隠し場所があると判断したのに相違ない。その指の示す方向の山林中を、彼らは二日間も歩き廻っていたではないか。しかし彼らはその所在地を知ることができなかった。