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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,645 字 · 47 頁

青空文庫

実は、その結城新十郎どののことで御前の御智略を拝借にあがりましたが」

「なにか事件があったかい」

「まことに天下の大事件で、新聞は記事差止め。密偵は津々浦々にとび、政府は目下御前会議をひらいております」

いつもながら虎之介の話は大きいが、御前会議は例外だ。海舟はフシギがって、

「どこかで戦争がはじまったかエ?」

「実は昨夜八時ごろ政商加納五兵衛が仮装舞踏会の席上何者かに殺害されました。当夜の会には閣僚はじめ各国の大公使、それに対馬典六、神田正彦も出席いたしておりました」

さすがの海舟も、神色自若たるものではあるが、口をつぐんで、ちょッと考えこんだ。天下稀代の頭脳、利剣の冴え、飛ぶ矢の早読み、顕微鏡的心眼であるが、事はまことに重大だ。

秘中の秘であるが、時の政府が国運を賭けて計画した難事業があった。当時の日本には、工業らしい工業がなかった。たった年産千トンの鉄工場すらもないのである。十何年も前から汽車が走りだしたが、その機関車もいまだに海外から輸入している。文明の利器というものは、国内では全く造ることができない。文明国の仲間入りをするには工業を興さなければならないし、それには先ず大製鉄所が必要だ。