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しょうわよねんのぶんだんのがいかん
昭和四年の文壇の概観
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《昭和四年の文壇の概観(しょうわよねんのぶんだんのがいかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 頁
ことにあまり人の注目をひかなかったようであるが、岡沢秀虎が『文学思想研究』および『文芸戦線』誌上に連載した、ソビエト・ロシア文学の史的研究は注目すべき述作であった。この他に、大宅壮一の歯ざれのいい、通俗的な、わかりやすい評論も、ますます冴えてきたように思われる。
中村武羅夫が、突如としてプロレタリア作家の作品の大部分を読んだ上で、プロレタリア文学を批判したことは、まずその精力的な点で、次にはその大胆率直な点で私たちを驚かせた。彼の批評には、見当ちがいな点も多分にあったが、中には肯綮にあたった部分も少なくなかった。彼がプロレタリア文学の作品がなんら新しい形式を獲得していないと批難したのは批難する方が無理であると思わせたが、「蟹工船」の批評には適切な意見が含まれていた。これに対して作者小林多喜二が『読売新聞』で、むやみに興奮して反駁したが、彼はあんな風に批評をうけ入れるべきではなかったように私には思われる。
蔵原惟人らの提唱によるプロレタリア・リアリズムの問題は恐らく来年へもちこされて十分に論じられるべき問題であろう。幾分お祭り気分的に上ずった、プロレタリア文壇の一部に対する青野季吉の忠告は、勝本氏らによりて簡単に葬り去られたが、この問題も来年度にはきっと再燃するだろう。