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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

まあ、おかけなせえ」

この男にも何かささやくと、かれは笑いながらうなずいた。

「大丈夫かね」と、半七は念を押した。

「まあ、うまくやりましょう」

「ここにいて藪蚊に責められているのも知恵がねえ。おまえさんが丁度来たから、もうそろそろ出かけるとしようか」

形ばかりに戸をひき立てて、内は留守だからと隣りの人にことわって、半七はかの男と共に露路を出ると、表通りはもう夜になっていた。かねて打ち合わせがしてあるので、半七はなるべく往来の少ないところを択んで、善竜院という寺の角に立った。この寺には弁天が祀ってあるので近所でも知られていた。ここらは一種の寺町ともいうべきところで、両側に五、六軒の寺がむかい合っていて、古い練塀や生垣の内から大きい樹木の枝や葉の拡がっているのが、宵闇の夜をいよいよ暗くしていた。そこらの大溝ではもう秋らしい蛙の声が寂しくきこえた。半七は頬かむりをして寺の門前に立つと、連れの男は折り曲がった練塀の横手にかくれて、蜘蛛のように塀ぎわに身をよせていた。

吉原通いらしい鼻唄の声を聴きながら、二人はここに半刻ほども待ち暮らしていると、暗いなかから人の来るような足音が低くきこえた。