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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁
切れた数珠を袂にした七兵衛も、今夜はおちつかない心持で御説法を聴いて帰った。帰り途には何事もなかった。
臆病な駕籠屋の口から洩れたのであろう。この頃は市内に化け猫があらわれるという噂が立った。槍突きの噂が静まらないうちに、更に化け猫の噂が加わったのであるから、女子供などはいよいよおびえた。それが八丁堀同心の耳にもはいって、更に町奉行所へもきこえて、奇怪の風説を取り締るようにという注意もあったが、その風説は尾鰭をそえて、それからそれへとますます拡がった。もう打っちゃっても置かれないので、七兵衛は自分で浅草へ出張って、馬道の裏長屋に住んでいる駕籠屋の勘次をたずねた。
「辻駕籠屋の勘次さんというのは、この御近所ですかえ」と、七兵衛は路地の入口の荒物屋で訊いた。
「勘次さんはこの裏の三軒目ですよ」と、店で姫糊を煮ている婆さんが教えた。
「勘次さんは毎日商売に出ていますかえ」
「なんだか知りませんけれども、この十日ばかりはちっとも商売に出ないで、おかみさんと毎日喧嘩ばかりしているようです」
「じゃあ、けさも家にいますね」
「いるでしょうよ。さっきから大きな声をしていましたから」