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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁
徳法寺をたずねて住職に逢うと、住職はもう七十くらいの品のいい老僧で、半七の質問に対して一々あきらかに答えた。徒弟の善周は船橋在の農家の次男で、九歳の秋からこの寺へ来て足かけ十二年になるが、年の割には修行が積んでいる。品行もよい。自分もその行く末を楽しみにしていたのに、なんの仔細でこんな不慮の往生を遂げたのか一向判らない。無論に書置もない、毒薬らしい物もあとに残っていない。したがって詮議のしようもないのに当惑していると、老僧は白い眉をひそめて話した。
筆屋の娘との関係については、かれは絶対に否認した。
「なるほど、近所ずからの事でもあれば、筆屋の店に立ち寄ったこともござろう。娘たちと冗談ぐらいは云ったこともござろう。しかし娘といたずら事など、かけても有ろう筈はござらぬ。それは手前が本尊阿弥陀如来の前で誓言立てても苦しゅうござらぬ。たとい何人がなんと申そうとも、左様の儀は……」
立派に云い切られて、半七も躊躇した。住職の顔色と口振りとに何の陰影もないらしいことは、多年の経験で彼にもよく判っていた。それと同時に、心中の推定が根本からくつがえされてしまうことを覚悟しなければならなかった。