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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
よんどころなく雨戸の隙間に耳を押し付けて、一心に外の物音を聴き澄ましていると、その物音は吹き消されたように忽ち鎮まって、風の音のほかには何んにも聞こえなくなった。
留吉は不思議に思った。なんだか気味が悪いようにも感じた。今まで聞こえていた物音は自分の空耳であったのか、あれほどの格闘が俄かにひっそりと鎮まる筈がない。一方が倒れたならば、尚更その物音がきこえる筈であるのに、何事も無しに忽ち鎮まってしまうのは可怪しい。しかも自分の耳にきこえたのは、風音でもなく、木の葉の摺れ合う音でもなく、たしかに人と人とが挑み合う音であった。
「変だぞ」
暫く縁側に這い屈んで、留吉は外の様子を窺っていたが、怪しい物音は再び聞こえなかった。根負けがして寝床へ戻ったが、彼はいよいよ眼が冴えて眠られなかった。
どうで夜明かしと度胸を決めているのであるから、眠られぬのは平気であったが、今夜の出来事について彼はいろいろに考えさせられた。男は誰か、女は何者か、なんのわけで夜更けに庭さきで、掴み合っていたのか。自分もその物音を聞いたばかりで、その正体を見とどけないのであるから、物に馴れている留吉にも見当が付かなかった。