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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

係り合いを恐れたかな」

黒沼伝兵衛の横死について、自分もその場に居合わせた関係上、なにかの係り合いになることを恐れて逃げ去ったかとも思われるが、自分ひとりでなく、その場には長三郎も立ち会っていたのであるから、我が身に曇りのない申し開きは出来る筈である。女子供では無し、分別盛りの四十男がそれだけの事で姿を隠そうとも思われないが、案外の小胆者で唯一途に恐怖を感じたのかも知れない。いずれにしても、もう一度詮議して置く必要があると、長八は思った。

「では、行って見て来い。やはり帰っていないようであったら、近所の者にも訊いてみろ。だが、よく気をつけてこちらの秘密を覚られるなよ」

「承知しました」

長三郎はすぐに表へ出てゆくと、一月末の空はいよいようららかに晴れて、護国寺の森のこずえは薄紅く霞んでいた。音羽の通りへ出ると、市川屋の職人源蔵に逢った。

「黒沼の旦那様は飛んだことでございましたね」と、源蔵は挨拶をした。

「丁度いい所でおまえに逢った。火の番の藤助はこの頃どうしているね」と、長三郎は何げなく訊いた。

「いや、それが不思議で、この廿日正月の晩から行くえが知れなくなってしまったのです。