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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
瓜生の一家は長八と、妻のお由と、長女のお北と、次女のお年と、長男の長三郎と、下女のお秋の六人暮らしで、男の奉公人は使っていない。長三郎は十五歳で、お年は十三歳である。お北の帰りが少し遅いので、長三郎を迎えにやろうかと云っているところへ、お北は隣家のお勝と一緒に帰って来た。水引屋の職人に送って貰ったと云うのである。
「唯今……。どうも遅くなりました」
茶の間へ来て、母のまえに手をついた娘の顔は蒼かった。
「お前、どうしたのかえ」と、母のお由は怪しむように訊いた。
「いいえ、別に……」
「顔の色が悪いよ」
「そうですか」
白い蝶が若い娘たちを気味悪がらせたには相違なかったが、お北自身は顔の色を変えるほどに脅かされてもいなかった。彼女は却って母に怪しまれたのを怪しむくらいであった。しかし、まんざら覚えのないわけでも無いので、白い蝶の一件を母や妹に打ち明けようと思いながら、なぜかそれを口に出すのを憚るような心持になって、お北は結局黙っていた。
「この春は風邪が流行ると云うから、気をお付けなさいよ」と、なんにも知らない母は云った。
夜も更けているので、妹のお年は姉の帰りを待たずに、さっきから次の間の四畳半に寝ていたのであるが、このとき突然に魘されるような叫び声をあげた。