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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

なにか怖い夢でも見たのであろうと、お由は襖をあけて次の間へ行った。

唸っているお年を呼び起こして介抱すると、少女のひたいには汗の珠がはじき出されるように流れていた。

お年の夢はこうであった。彼女が姉と一緒に広い草原をあるいていると、姉の姿がいつか白い蝶に化して飛んでゆく。おどろいて追おうとしたが、とても追いつかない。焦れて、燥って、呼び止めようとするところを、母に揺り起こされたのである。

その夢の話を聴かされて、お北ははっと思った。今度こそは本当に顔色を変えたのである。しかもそうなると、白い蝶の一件を洩らすことがいよいよ憚られるように思われて、彼女はやはり口を閉じていた。母も少女の夢ばなしに格別の注意を払わないらしかった。

「子供のうちはいろいろの夢をみるものだ。姉さんはここにいるから、安心しておやすみなさい」

お年は再び眠った。他の人々も皆それぞれ寝床にはいったが、その後にはなんの出来事もなく、瓜生の一家は安らかに一夜を過ごした。宵からの疲れで、お北も他愛なく眠った。

風は夜のうちに止んでいたが、明くる朝は寒かった。こんにちと違って、その当時の音羽あたりは江戸の場末であるから、庭にも往来にも春の霜が深かった。