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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

「おまえは今頃なんでこんな所に忍んでいたのだ」

お冬は黙っていた。

「おれ達は十手を持っている人間だ。おれ達の前で物を隠すと為にならねえぞ」と、吉五郎は嚇すように云い聞かせた。「そこでお前の親父はどうした。まだ帰らねえのか」

「はい」と、お冬は微かに答えた。

「ほんとうに帰らねえか。あすこの佐藤という旗本屋敷に隠されているんじゃあねえか」

お冬はやはり黙っていた。

「お前はそれを知っている筈だ。おまえの親父は訳があって、当分は佐藤の屋敷に隠れているから心配するなと、お近という女から云い聞かされている筈だが……。それでも知らねえと強情を張るか。又そのお近という女は、ときどきにお前の家へ忍んで来て、黒沼の婿の幸之助と逢曳をしている筈だが……。それでもお前は強情を張るか」

お冬はまだなんにも云わないので、吉五郎はほほえみながらその肩を軽く叩いた。

「おまえは年の割に、なかなかしっかり者だな。と云って、褒めてばかりはいられねえ。あんまり強情を張っていると、おれも少しは嚇かさなけりゃあならねえ。おまえは一体、なんでここへ来ていたんだよ。おまえにも色男でもあって、今夜ここへ逢いに来ていたのか」