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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

それを見送って、二人はもとの本堂へ引っ返すと、松吉はかの木魚を指さした。

「親分はさすがに眼が利いているね」

「眼が利いているのじゃあねえ、耳が利いているのだ。あの木魚の音がどうも唯でねえと思った。それで、どうした」

「この通り……」と、松吉は笑いながら木魚に手をかけてもたげると、木魚には底蓋があった。

「なるほど。考えやがったな」と、半七も笑った。

木魚の内が空になっているのは普通であるが、これは別に底蓋を作って、その上に被せるように仕掛けてあった。ただ見れば有り触れた木魚であるが、その口から何物かをし込めば、底蓋の上に落ちて自由に取り出すことが出来るようになっている。現に小さい結び文が落ちていた。

半七はその結び文をあけて見ると、女文字で「十五や御ようじん」と書いてあった。十五夜御用心――それは十五夜に於ける異変を予告するようにも見られた。

「なんの為にこんな仕掛けをして置いたのかな」と、松吉は木魚をながめた。「密書を投げ込む為かね」

「まあ、そうだろう。今も寝道具を調べたら、白粉や油の匂いがする。ここには女文字の文がある。なにしろ、この一件には女の詮議が肝腎だ。