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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
それから一刻あまりを過ぎて、孫十郎が奥で午飯をくっていると、小僧が店からはいって来た。
「旦那に逢いたいと云って、立派なお武家がみえました」
「どなただ」
「初めてのお方のようでございます」
「店へお上げ申して、お茶をあげて置け」
早々に飯をくってしまって、孫十郎は店へ出てゆくと、今度の客は羽織袴、大小のこしらえで、二十二三の立派な武士であった。かれは店へあがって、客火鉢のまえに坐っていた。
「わたくしが亭主の孫十郎でございます。お待たせ申しました」
挨拶のすむのを待ち兼ねたように、武士は店の隅へ眼をやりながら訊いた。
「早速だが、きのうまであすこにかかっていた生成の仮面、あれはどうしたな」
「あれはけさほど御約束が出来ました」
武士の顔色は俄かに陰った。
「あ、それは残念。して、その買い手は何処のなんという人だ」
孫十郎から詳しい話をきかされて、若い武士はいよいよ顔色を暗くした。かれはひどく困ったようにしばらく考えていたが、やがて小声で云い出した。
「近ごろ無理な相談ではあるが、どうであろう、その買い手の方をなんとか破談にしてくれるわけには行くまいか」
「そうでございますな」