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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
と、武士は蒼ざめたひたいに太い皺を織り込ませて、唸るように溜息をついた。
孫十郎もいよいよ当惑した。理窟をいえば、勿論この若侍の不念に相違ない。重役たちの云う通り、それほど大切な詮議の宝を見つけたならば、なにを措いても買い戻しの手だてをめぐらすべきであった。それを怠って、今さら悔むのは不覚である。しかしその不覚は不覚として、この侍の身になってかんがえると、まったく途方にくれることであろう。申し訳の切腹もあるいは是非ないかも知れない。まさかにこの店さきを借用するとも云うまいが、老い先のながい侍ひとりが、腹を切るというのを唯眺めているわけにも行かない、どうも困ったことが起ったと思うと同時に、一種の商売気が彼の胸にうかんだ。
「そういう仔細をうかがいますると、まことにお気の毒に存じられますが、くどくも申す通り、もはや先約がござりますので……。手金まで頂戴いたして置きながら、今さら破談と申すのは商売冥利、はなはだ難儀でござりますが、ともかくも明日先様がおいでになりましたら、一応は御相談いたしてみましょうか」
「そうしてくれれば何よりだが……」と、武士は縋るように云った。