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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
彼はその武家に一度逢わせてくれとも云った。
逢わせてもいいのであるが、一方へ二十五両で売る筈であった仮面を、今度は百五十両に売り込もうとするのであるから、前後の買い手に対談させて、万一その秘密が発覚しては妙でないと思うので、孫十郎はなるべく両方を突きあわせたくなかった。かれは強いてその客に酒をすすめて、だんだんに酔いのまわるのを待って、更にいろいろ口説き落して、とうとう手金の幾倍増しで破談というところまで漕ぎつけた。
それは孫十郎も最初から覚悟していたのであるが、客は手付け金三両の二倍や三倍では肯かなかった。これを破談にする以上は、どうしても百両よこせと云い出した。酔っての上の冗談ではなく、彼は真剣にそう云うらしいので、孫十郎も面喰らった。勿論、その云うがままに百両の違約金を出しても、かの武士からは五十両の金をうけとっている。その上にかの仮面を百五十両に売り込めば、差引き百両の儲けは見られる。この能役者に売ったのでは、丸取りにしても二十五両にしかならない。そこらの胸算用をしてかかると、たとい法外の違約金を取られても、破談にした方が大きな得であると、例の商売気が勝を占めて、孫十郎は更に根気よく押し問答の末に七十五両というところで相談がようやく折り合った。