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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
「あの、奥の方で何か跳ねているのは、なんでございましょう」と、女は訊いた。
「そんな音がきこえましたか」と、お徳は白らばっくれてこたえた。「雨だれの音じゃありませんかしら」
その苦しい云い訳を打ち消すように、台所の鯉はまた跳ねた。
「おかみさん、どうぞお隠しなさらないでください」と、女はいよいよ恨めしそうに云った。「唯今も申す通り、わたくしの枕もとに紫の鱗が落ちていました。奥で今跳ねているのは確かに魚でございます。魚の跳ねる音でございます。一生のおねがいでございますから、どうぞその魚を一度みせてください。その魚はきっとむらさきに相違ございません」
お徳ももう返事に困って、唯おどおどしていると、女の様子がだんだんと物凄く変って来た。
「ごめんください。ちょっと奥へ行って拝見してまいります」
女は起って奥へゆきかけるのを、お徳はさえぎる力もなかった。女の起ったあとを見ると、そこの畳の上は陰ったように湿れているので、かれは又ぞっとした。
二
むらさきの鯉は怪しい女の手によって、台所のあげ板の下から持ち出された。鯉はかれの両袖にかかえられて、おとなしく運び去られるのを、女房は唯うっかりと眺めていると、女は帰るときにお徳に云った。