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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

半七が店さきへ立ち寄ると、彼は将棋の手をやすめてすぐに見返った。

「いらっしゃい」

「いや、わたしは履き物を買いに来たのじゃあねえ。神田三河町の徳次兄いに頼まれて来たのだが……。おまえさんは半介さんかえ」

「へえ、半介でございます」と、彼は半七の顔をじっと視た。

「おもしろい勝負事の邪魔をして、済まなかったな」と、半七も店に腰をおろした。

「はは、勝負事……。こんな勝負事なら、店の先でも立派にやれますよ」と、半介は笑いながら、手に持っている駒を投げ出した。「まあ、勝負はあしたまでお預かりだ」

眼で知らされて、相手の男は早々に立ち去った。そのうしろ姿を見送って、半七は云った。

「女郎屋の若い衆らしいが、いくら昼間でもここらへ来て将棋をさしているようじゃあ、宿もこの頃は閑だと見えるね」

「ひどい閑ですよ。なにしろ倹約の御趣意がよく行き届きますからね」と、半介はすこし顔をしかめた。「先月の二十六日なんぞも寂しいもんでした」

こんな話をしているあいだも、彼は油断なく相手の眼色を窺っているらしかった。

「実はきょう来たのはほかでもねえが、今も云う通り、徳次兄いに頼まれて来たのだ。